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東京脳神経センター病院 院長挨拶

  • 東京脳神経センター病院
    院長  堀 智勝
  • 2016年8月1日に開院する東京脳神経センター病院の院長を拝命した、堀です。
    当院は慢性期脳神経疾患及び回復期リハビリを中心とした病院です。東京オリンピックを4年後に控え、脳神経疾患の治療に際し、国際的にも一流レベルの医療を提供するために開設されました。私は鳥取大学、東京女子医科大学の主任教授を約25年勤めた後、旧森山記念病院、新百合ケ丘総合病院の名誉院長を経験した後に当院に赴任しました。当院にてスクリーニングを行い、手術的治療が必要な場合には、手術用顕微鏡や内視鏡を駆使して高度な治療を行い、必要があればサイバーナイフ、超音波集束装置を用いた非侵襲的な治療を新百合ケ丘総合病院にて行います。また脳の悪性腫瘍の手術を行った後に患者さんが希望されれば、国立がんセンター(成田部長との提携)に転院していただくことも可能です。
    私のライフワークの一つはてんかんの外科治療(てんかん学会専門医、指導医、てんかん学会名誉会員)です。最近では非侵襲的な超音波集束機による治療も始めており、この分野では世界のトップランナーを自負しています。
    また、最近の高齢者の増加に伴う認知症の増加は著しいものがありますが、当院では脳の健康チエック(物忘れドック)を行い、早期の物忘れの段階で軽度認知障害を発見し、サプリメントを中心とした認知症予防治療を進めております(認知症学会専門医、指導医、専門医指導施設)。
    震え、書痙、パーキンソン病などによる機能の障害には、薬剤による治療の他、超音波集束機による治療を進めます。
    三叉神経痛では微小血管減圧術の他に、高齢者などでは高周波電気治療にも長年の実績があります。顔面痙攣でも微小血管減圧術はもちろん、ボトックスによる治療実績もあります(ボトックス治療学会顧問)。また脳性麻痺や脳血管障害後の痙縮に関しては、ボトックスは勿論のこと、神経縮小術、後根切断術、バクロフェンポンプ埋設、DREZtomyなどすべての治療に対応可能です。
    頭痛専門医(私他)による頭痛外来、pain clinic (疼痛学会名誉会員)も当院で開設し、脊椎疾患による痛みの治療や手術治療も可能です。
    東京女子医大では毎年1000例近くの手術治療を経験して来ましたが、引退後も全国から治療不可能と言われた手術症例がインターネットや医療関係者の紹介で私を訪ねて来られ、今まで見たこともなかったような巨大な深部に位置する症例を手術する機会に恵まれ、良好な治療結果を得てきました。戦略的に困難な脳腫瘍の治療に関しても最近外国の本の1章に論文を出しておりますが、2016年福岡で行われる脳神経外科総会では脳幹部グリオーマ手術への挑戦と題したシンポジウムに演題が採用され今秋発表予定です。血管障害についても脳幹部海綿状血管腫手術症例は本邦でトップレベルの他、血管内治療を始め未破裂脳動脈瘤の治療も積極的に進めており、必要あれば術後リハビリが可能です。以上、諸外国を含めた全国からの脳神経疾患の患者さんをお待ちしております(記2016年7月)。

職歴

  • 1968年
  • 東京大学医学部卒業、脳神経外科教室入局(佐野圭司教授)
  • 1969年
  • 東京警察病院脳神経外科レジデント,ECFMG合格
  • 1973年
  • フランスパリ サントアンヌ病院 脳神経外科留学(タレラック教授)てんかん外科を学ぶ1975年まで。
  • 1981年
  • 鳥取大学脳幹研究施設脳神経外科助教授
  • 1984年
  • 鳥取大学脳幹研究施設脳神経外科教授
  • 1995年
  • 同上施設長
  • 1998年
  • 東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科主任教授
  • 2008年
  • 同上センター長
  • 2009年
  • 同上退任、森山記念病院名誉院長
  • 2012年
  • 新百合ヶ丘総合病院名誉院長
  • 2016年
  • 東京脳神経センター病院院長、新百合ヶ丘総合病院名誉院長現在に至る

専門医、指導医など

日本脳神経外科学会、日本てんかん学会、日本脳卒中学会、日本頭痛学会、日本認知症学会、日本医師会認定産業医、など

学会長

1996年日本脳神経外科コングレス、2007年日本脳神経外科学会、2008年日本てんかん学会、2018年日本脳神経外科認知症学会など

症例

  • このグラフは私が東京女子医科大学に就任した1998年6月以来の東京女子医科大学の手術症例数の年次推移であります。私が退任する直前の2008年には手術症例数1000例に達しております。即ち1997年420例であったものが、私が在任中にほぼ2.4倍になったことを示します。
  • 1)グリオーマ
    私の専門は良性脳腫瘍及びてんかん手術ですが、悪性腫瘍であるグリオーマの私の在任中の5年生存率を示したものです。全国統計と比較していただければその治療成績が良い事は一目で分かります。治療成績の向上は覚醒開頭(日本で初報告)や術中のマッピングの確立、術中MRIの使用などが上げられますが、一番の理由は全摘出率が高いという事です。私の引退後にも種々の治療法が進歩していますが、実は私が在任中の成績が一番良好であったという話を後輩医師から聞いております。現在では手術+サイバーナイフ+自家腫瘍ワクチン(セルメディシン)+化学療法(テモゾロマイド+アバスチン)でてんかん外科の経験をいかしてグリオーマの患者さんの治療を行っております。
    2)側脳室内腫瘍
    合計82例(76例東京女子大、6例鳥取大学)です。グリオーマ17例、膠芽腫9例、髄膜腫10例、神経細胞腫15例などですが、特に神経細胞腫は私の得意とする手術です。全摘出を心がけ、術後に放射線治療は最初の1例(鳥取大学)を除き行っておりません。全15例で再発はありません。下の図は女子医大退任後の2013年に手術全摘した患者さんです。現在3年以上経過していますが再発はありません。
  • 3)間脳下垂体疾患
    良性腫瘍では間脳下垂体腫瘍(約900例)が得意な分野です。特に頭蓋咽頭腫は100例以上の手術経験があり、基本的に前半球間裂(AIH)アプローチ(118例)を多用して全摘出(78%)を目指しております。最近では再発(22%)例に対してはサイバーナイフ治療を加えて良い成績を出しております。下垂体腫瘍は現在では内視鏡を用いる手術が主流ですが、髄液漏が問題になります。私は1986年に日本医事新報に腫瘍摘出後の髄液防止のための硬膜縫合テクニックについて報告しており、現在もこのテクニックは非常に有用で、術後髄液漏に関しては1.2%となっています。下図は私の退任講義の時の間脳下垂体疾患の症例数(女子医大)です。2008年5月には成長ホルモン産生腫瘍60例の治癒率(IGF-1< +2SD, 75GOGTT < 1ng/ml)は87%と向上し2003年4月の60例の治療成績70%を大きく上回っています。
    視床下部グリオーマも私の得意な手術対象です。亜全摘出を行い、pilomyxoid typeを除いて放射線治療をせずに追跡していますが、再増大は無く、頭蓋咽頭腫に比べてホルモン障害も軽度です。腫瘍と視床下部のinterfaceを腫瘍側でぎりぎりの摘出を行う方針が良いと思われます。視床下部過誤腫は11例の手術経験があります。過誤腫と視床下部の境界で過誤腫からの発作波を遮断する積りで腫瘍+interface後方2/3まで徹底的に過誤腫を含めて摘出します。10例目ではこの方針を貫徹できたので、術直後より発作は消失し、精神遅滞も正常に戻り、思春期早発症はLH-RHアナログで治療し笑い発作を含めててんかん発作は完全に消失しました。10例は半球間裂アプローチで、動脈瘤を合併していた1例はpterional アプローチで手術しました。エンゲルクラスIは約60%です。側頭下アプローチも有用な手術法です。手術以外では高周波凝固術が有効と報告されていますが、今後集束超音波治療が有用ではないかと思われます。詳細は拙著てんかんの外科治療を参照していただきたいと思います。
  • 世界でも私と米国耳鼻科医レオポルド教授しか行っていない異臭症の手術では経鼻手術で篩骨洞に到達し、罹患側嗅糸を徹底的に切除します。約半数の患者さんは術後嗅覚が復元します。年に数例の手術を積み重ね約20例の経験があります。

4)聴神経腫瘍
鳥取大学の48例、東京女子医科大学での172例計220例を2009年3月までに手術を行いました。引退後15例ほど経験を積んだので235例の経験があります。顔面神経温存は鳥取大学で83.3%、女子医大で94.8%です。顔面神経麻痺に対しては術中の吻合を行ったものが鳥取で7例、女子医で6例、舌下神経との吻合を行ったものが女子医大で2例、形成外科に再建をお願いしたのが鳥取1例、女子医1例です。聴力温存に関しては、術前有用聴力があった67例で、ガードナーロバートソングレード1,2(有用聴力温存)は30例44.8%、グレード3,4は15例(22.4%)でした。全体として聴力を保存できた症例は45例(67.2%)でした。術前グレード3,4であった42例で術後も3,4に保存可能であったのは26例(61.9%)でした。全体としてはモニタリングの下に全摘出を全例で目指す方針で手術はsuboccipital trans meatal approachが殆どで、まれにmiddle fossa approachを行いました、経迷路法手術は行っていません。220例中γナイフを使用したのが14例でした。1例張力温存の為に内耳道内の腫瘍を残した症例はほどなく再増大し、結局再手術を行い全摘出しましたが聴力は失いました。最長追跡期間は35年に上りますが再発例はありません。小脳橋角部髄膜腫では聴力が術前あったものは全例で温存可能でした。

5)髄膜腫
Olfactory groove meningiomaではAIHで手術して術前嗅覚がある症例では全例嗅覚を温存し得ています。今後の問題は再発性、多発性非定型的髄膜腫の治療を如何にするかですが、結局最初の手術で全摘することが大事です、術後のガンマナイフなどは行わない事が再発性、多発性非定型的髄膜腫を防止する手段だと考えています。

6)てんかん手術
てんかん手術は年間15例以上現在でも、行っております。最近では超音波集束装置によるてんかん原性領域の治療が非侵襲的治療として今後発展するのではないかと思っております。

継時的な女子医大でのてんかん手術の流れを示すと、2000年から硬膜下電極挿入によるてんかん手術を鳥取大学に引き続いて始めることが可能になりました。手術の件数は徐々に増加して年間17例程度で現在も同程度です。東京脳神経センター病院、新百合ヶ丘総合病院でてんかんの長時間ビデオモニタリングが可能であり、手術もナビゲーション下に十分な治療結果を現在(2016年)も得ています。特筆すべきは2016年8月に新百合ケ丘総合病院で行った左側頭葉てんかん患者に対する、超音波集束治療の効果が良好なことです。2016年12月に薬事も通り、2017年には本格的にてんかんに対する超音波集束治療が始められることと思われます。12ヶ月以上の追跡が得られた65例の手術結果では全く術後発作が消失した症例はClass I:64.6%であり、世界の水準と同等です。引退後も日本てんかん学会と日本脳神経外科学会では毎年演題を発表しております

6)困難な症例
私のもう一つの専門は脳神経外科全般の困難な疾患の手術的治療です。特に側頭葉に関連する疾患が得意です、側頭下アプローチによる側頭葉てんかん、側頭葉腫瘍(良性、悪性グリオーマ)、海綿状血管腫、動静脈奇形、脳底動脈、脳底動脈幹動脈瘤などが得意な治療対象です。手術的に困難な部位のグリオーマは私の経験は125例です。視床腫瘍55例、視床下部腫瘍42例、脳幹部腫瘍(グリオーマ27例)、基底核腫瘍1例です。海綿状血管腫(108例、脳幹部35例)に関しては本邦でも1,2の手術症例数を誇っており脳神経外科総会でも2016年のシンポジウムなどで発表しております。

7)微小血管減圧術の症例は三叉神経痛160例、顔面けいれん250例、舌咽神経痛10例、です。三叉神経痛に関しては高周波電気凝固術の経験が76例ある点が他施設と異なる点です。

てんかんの外科治療に関しては2015年に創風社から本を出版したのでご参照ください。

私の治療方針:てんかん外科で培った、脳解剖、生理学的知識を活かして、あらゆる脳病変に積極的に取り組む事が私の基本方針です。病変は可及的に全摘出し、障害は最小限に抑えるという方針で卒業以来約50年が経過しました。その間に年間平均して200例、即ち10、000例以上の脳外科手術に取り組んでまいりました。時には予期せぬ合併症に悩まされた事もありました。医療訴訟に3件まき込まれましたが2件勝訴、1件も術前の説明が不十分であったという事だけで済んでおります。約25年の教授生活を無事勤め上げましたが、現在では経験を糧に年間約100例程度の手術治療に従事しています。晴耕雨読の心構えで来るものは拒まずという方針で患者さんに接しております。セカンドオピニオンなど御座いましたら、どうぞ遠慮なく御来院ください。